TIME.





「あ、タキ!ついでに俺のトマトジュースも取ってくれ〜」

冷蔵庫をあさりに立ち上がった男に、
ソファーを占領している黒髪の男が寝そべったままそう言った。

「あん?冗談じゃねーよ。そんくらいテメーでやれ」
「え〜。タキちゃん酷ーい。いーじゃん、ついでだろー」

黒髪の男は視線をテレビゲームに注いだままで、
人様の家のトマトジュースを我が物顔でせがんでいる。
派手な髪の男もそれを気にすることなく、
言葉を交わしながら冷蔵庫の中身を黙々とあさり続ける。

「いくら俺の部屋でタバコ吸うなって言っても聞かないような奴に、
 俺が取ってやるとでも?」

もう彼の為のトマトジュースは取り出しているのに、
棘のある一言を言い放つのはささやかな嫌がらせ。




―――GAME OVER―――




タイミングよくテレビゲームの主人公のHPがゼロになってしまった。
コントローラーをテーブルの上において初めて、
背を向けて冷蔵庫をあさる派手な金髪に目をやる。

「もしかしなくてもサ、それって俺に対する嫌味?」

そう言った男はまるで悪戯に成功した子供のような幼い笑顔で笑った。

「それ以外に何があんだよ?」
「・・・・・。はいはい、分かりました〜。吸わなきゃいいんだろー」

黒髪の男はのっそりソファーから身を起こし灰皿に吸いかけのタバコを押し付けた。
タバコは少しだけ燻って白い煙を昇らせた。

「はいよ。トマトジュース」

派手な髪色の男は自分用のオムライスとトマトジュースを持ってリビングに戻り、
トマトジュースを黒髪の男に投げてやる。
缶が綺麗な弧を描きながら黒髪の男の手に落ちた。

「サンキュ」
「大体、リョウさっき禁煙宣言してたばっかじゃねーか」

お前そのうち肺癌で死ぬぜ?、なんて言って。
痛々しいほど両耳にピアスをして髪を鮮やか金色に染めているこの男のほうが、
よっぽど煙草が似合っているのにこの男は吸わないらしい。
黒髪の男はその話に少し口元を緩ませながら、缶を開けるとそのまま一気に飲み干した。

「まあ、そんな死に方もいいかもな」

ケラケラと笑って新しい煙草に火をつける。
派手な髪色の男は漂う煙を見ながら、
俺がコイツより先に副流煙で死ぬかも。とぼんやり考えた。




気疲れしない存在がいるだけで良い。
だから他には何も望みはしない。望まれるだって真っ平御免だ。
俺たちはそうして生きてきたんだし。

これまでも、そしてこれからも。




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