繋ぐ ユウとアキはショッピングモールに来ていた。 今日はイベントも行われていて、とても楽しい雰囲気で過ごしていた。 しかし、状況は一変した。 原因は、明らかだ。 先刻、ユウの携帯が鳴った。相手は、女だった。 「おい!な、なに怒ってんだよ!?」 アキはコートのポケットに両手を突っ込んで、ユウより先に歩を進める。 「別に、怒ってなんかない」 「怒ってんだろ、どう見たって!」 その女からユウには、よく電話が掛かってくる。メールもくる。 アキは、彼女がどんな人かは知らない。会ったこともない。 でも、顔は写真で何度か見たことがあった。 ずっと仲のいい友達なのだそうだ。もう十年以上も長い付き合いだと言っていた。 その彼女はつい数ヶ月前に結婚していて、その旦那も彼女と同様にユウの友人だった。 ユウと彼女とその旦那、その他にあと男を二人加えた五人は仲のいい友人同士だ。 ―――そんなこと、分かってる。 「ちょっと待てよ!」 ユウはアキの腕を掴んで、自分の方へと振り向かせた。 「なによ」 アキの目は完全に怒りの色をしているのに、声は異様に静かだった。 ユウは呼吸を整えて、落ち着いた声で尋ねる。 「なに怒ってんの、どうしたの?」 「怒ってる?いつあたしが怒ってるって言ったの?勘違いじゃない?」 言下に、アキの眉間がピクッと動いた。 まるでそこに怒りが溜まっているようだった。 「怒ってるだろ、どう見たって!電話のことか?  お前だって知ってるだろ、いつもの奴だよ」 「どう見たって?何処をどう見たって言うのよ?何を根拠にそんなこと言うの?」 「電話に出たこと怒ってんのか?それは悪かったって…  今度アイツらの家でみんなで鍋やるんだって、だからその材料を…」 「その話、今あたしに話すべきことなのかしら?  あたしの人生において、その出来事は何の意味も持たないの。  だから、無駄なことは言わないでくれる?」 アキはユウの手を振り解いて、さっさと歩き出した。 エスカレーターに乗って、下の階へと移動する。 「おい、アキ!お前いい加減にしないと怒るぞ!」 「あーら、怒ってどうするの?好きにしたら」 アキは背を向けたまま答えた。 「あのなぁ……お前ももう子どもじゃないんだから…」 「あなただって子どもじゃないでしょう?  だったら、あたしの心情くらい汲んだらどうなの?」 ―――あぁもう、苛々して先刻食べたパスタを吐き出しそう…。 「あーもう!」 ユウが少し大きい声でそう漏らした。 「いい加減にしろよな!友達の家に鍋食いに行くぐらいで怒るなよ!」 「怒ってないって言ってんでしょ」 「…いつもの五人に、その内の一人が彼女連れて来るんだよ。  紹介してくれるっていうから鍋パーティーやろうってなっただけなんだから」 「そんな事情聞きたくもないわ!」 エスカレーターを降りるなり、アキは物凄い勢いでユウに食いかかった。 「あー下らない!その鍋の材料を何でアンタが用立てる必要があるわけ?  鍋やるって言い出したのはその女なんでしょ?  自分で用立てれば済む話じゃない。何でアンタが出てくんのよ!  っていうかそもそも何でその全く知らない友達の女の為に鍋パーティーするわけ?  そしてなんでアンタがわざわざ紹介されにいくわけ?意味がわかんない!!  行ってどうするのよ?会ってどうするのよ?  っていうかアンタ今日だって疲れた疲れたって言ってるくらいなんだから、  そんなことしてる暇があるんなら家で寝てればいいじゃない!  そうやって下らないトコ行って、疲れて帰ってきてあたしにまた疲れたって言うんでしょ?  毎度同じこと繰り返すくらいなら自分で自覚して、解決努力をすべきじゃないの!?」 ―――あ〜あ…、また言っちゃった…。 ユウをもう一度睨みつけて、アキは再び先を歩き出した。 「…この際だから言うけど、お前がどう思ってようが俺は友達だって大事なんだよ!!」 ―――…そんなこと、分かってるし、知ってるわ。 「そうだね、大事よね!だから好きにすればいいって言ってんのが分かんないの!?  いちいちあたしに報告なんかすんじゃないわよ!!鬱陶しいから!!」 「なんでそういう言い方するんだよ…。お前だって友達と遊びにいくだろ?」 「なに?行くなって言うなら行かないわよ!」 「そうじゃなくて!」 ある店の前で、二人は別々になった。 ユウはその店に用事があった。 アキはそれを知っていたが、自分は居た堪れなくなってトイレへと向かった。 会話は、途切れた。 トイレのドアを閉めるなり、思わず溜息を吐いた。 そのまま力なくドアに寄り掛かって、暫らく動くことが出来なかった。 ―――なんで、いつもこうなんだろう。 こんなに胸が抉られるように痛くなって、泣きたくなる。 ユウがみんなの人気者で、慕われているのは何よりも自慢なのに。 ―――…笑っちゃう。 自分の中にある気持ちがあまりにも単純過ぎて。 トイレから出て来ると、付近にあるベンチにユウが座っていた。 アキは遠くからその姿を見て、顔をしかめた。 ユウは携帯を弄っていたが、アキの姿に気付くとすぐに立ち上がった。 手には先刻の店で買ったものを持っている。 「…帰るぞ」 ユウは背を向けて、一言そう告げた。 後ろに居るアキに向かって、ユウはそっと手を出した。 いつもだったら、機嫌が良かったら、その手にすぐ飛びつくのに。 アキはその手を眺めていた。 ―――浮気なんてしないってわかってる。それでも、悔しいの。    男だろうが女だろうが、友達だろうが関係ない。    あたし以外の人にこの特別な人を渡したくない。例え一時でも。 「おい、アキ」 ―――嫉妬よ、ただの。ホントに大好きだから。    あたしの傍に居て欲しいんだもの。 「いーかげんにしなさい」 ユウはそう言うと、アキの手を強く掴んだ。 ユウと目が合う。 アキは悔しそうな目を向けて言った。 「大っ嫌いよ、アンタなんか」 それを聞いて、ユウはそっと微笑んだ。




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